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■平成24年12月2日/駕与丁公園/

◯N.ライオンズ8ー2混合油ズ●

NL: 1 4 0 2 0 1 0 0 0: 8
A : 0 0 0 0 0 0 1 1 0: 2

勝・岩井 13勝2敗2S
◯岩井・久保・安井ー中津
打・ 松永1

2012年度チーム個人タイトル
☆首位打者・松永
☆打点王 ・美澤
☆本塁打王・吉武

☆M.I.P. 賞・小田

★M.S.P.賞・中津

■平成24年11月25日/駕与丁公園/

◯N.ライオンズ5ー3レッドバイソン●

RB: 0 0 0 0 0 0 0 3: 3
NL: 0 0 0 0 5 0 0 X: 5

勝・久保 6勝0敗0S
S ・美澤 0勝1敗2S
◯久保・美澤ー中津
打・ 杉町

■平成24年11月18日/大井中央公園/

○N.ライオンズ 6-2 メイズスクラッピー●

NL:0 0 3 3 0 0 : 6
MS:2 0 0 0 0 0 : 2

勝・岩井 12勝2敗2S
◯岩井ー美澤
打・なし

【経過】
歓喜に湧いたパブリックリーグ優勝から3週間……再び、優勝戦の再現となる一戦が、練習試合として開催された。
しかし、リーグ戦激闘の疲労を考慮し主力数名をベンチから外して完全療養。
優勝の立役者・松永、中津、翔平を欠く布陣で臨む事となった。
今季最終目標(優勝)を達成した事で、早くも来季に向けて戦力の見極めの時期に入ってきた。

優勝投手ながら最年長、ひとり四捨五入で50代に突入した岩井が、その微妙な空気を察しない訳がない。
誰よりも先にランナーコーチャーに入り、自らボールボーイを買ってひたすらファウルボールを追いかけるなど、その存在感を執ようにアピールしまくった。
1回表、先頭打者として登場し、なぜか草色のユニホームに身をまとった安井が、鋭い当たりのライト前安打で出塁。1死から久保が四球で歩き一、三塁とすると、ここで4番・美澤!誰もが確実に先制点を期待する中、まさかのサードゴロ併殺……初回無得点に終わった。
岩井はいつにも増して結果を意識しながらのマウンド。
リベンジに燃える相手打線を前に、“NL伝説の初老”が立ち塞がる。
しかし、意気込むとロクな事がないこれまでの前例通り走者を背負い、味方の連続失策で早くも2失点……寂しげに、枯れ果てた姿でベンチへと戻って行く。
そんな岩井を早く援護したい打線は2回、先頭打者が相手エラーを誘い出塁を果たす。続く吉武がいつものようにレフト線上へ流してポトリと
落とす“黒い”安打で無死一、三塁。
誰もが反撃の得点を期待するも、後続が倒れまさかの無得点。首の皮一枚を恐れる初老をなかなか援護できない。
もうこれ以上の失点はチームの勝敗以上に、自らの去就に関わってくるとばかりに岩井の顔つきが変わる。
ようやく本来の投球を取り戻し、2回をテンポ良く無得点に抑えると、3回に待望のビッグイニングを迎えた。

先頭のMG深町がボテボテの内野ゴロながらも懸命に一塁を駆け抜け出塁を果たす。
1死二塁から打席には安井。なぜか草色のユニホームで違和感を与えながらも、今度はレフト前へ痛烈に運ぶタイムリー。
右に左に連打をかまし復活を印象づけると、勢いに乗せられた絶不調の小田までもがレフト前安打で続く。
期待のクリーンアップで何とかしてくれ~と願う3番・久保の打席。この日午前中のロードワークで5km走を完走するストイックな姿勢を見せ、さすがに足腰ガタガタの中でも2つのバッテリーエラーで得点を呼び込んだ挙げ句、四球を選んだ。
まさにNLの優等生、若き幹部候補生だ。
さらに4番・美澤が復調を印象づけるレフト前安打からNL打線の連打で一、二塁。
好機に『打ちたい……』黒い欲望を抑えチームプレーに徹した吉武が四球を選んで2死満塁。ゲームを決定付ける大チャンスも後続が倒れこの回3得点。

4回には下位打線がチャンスを作り、妖しく光る草色のユニホームの安井がまたしてもライト線に転がる2点タイムリー。陽射しを浴びた満面の笑顔で、シーズン終盤の『遅い!』復活劇を演出。
リードを4点に広げて岩井のピッチングがさらに加速度を増し、結局4回2失点。
勝ち投手の権利を持ったまま、表面上は潔くマウンドを譲り、5回からリリーフ陣に後を託した。
結局、リードを4点のまま最後まで守り切り、岩井は12勝目をマーク。
『今は全く負ける気がしない……』と豪語した直後に偶然、指揮官が前を通り掛かると、戒めの鉄槌を恐れ“岩のカーテン”で自らを防御。
この辺の動きに抜かりは全く感じられない。
今季もラスト2試合。例年通り、残るは骨肉の個人タイトル争いが激化していく。

■平成24年10月28日/駕与丁公園/
○N.ライオンズ 5-2 メイズスクラッピー●

NL :1 0 4 0 0 0:5
MS:2 0 0 0 0 0:2

勝・岩井 11勝2敗2S
○岩井ー中津

打・岸本 2

【優勝ドキュメント】
前日まで降り続いた雨も劇的に止み、大一番に相応しい天候に回復した。
今、まさに、パブリック・リーグ最終決戦の舞台、駕与丁公園野球場は、決戦の火ブタが斬って落とされようとしている。
試合開始2時間以上も前から球場入りした岸本、吉武のNL首脳陣は、早くも球場周辺をランニング…いや、ウォーキング…単なるオッサンの散歩がてらに、この日の戦略会議を開始。
自らの調整と、“黒い”計算を立てている最中、指揮官の携帯が鳴り響く。
この日、都合により無念の欠場予定だった、“NLエキゾチック・ジャパン”GO池田が、決戦の大舞台の為にギリギリまでスケジュール調整をし、
土壇場での出場を決めたという一報が入った。
『よっしゃあ!!打順組み替えだ!』

続いて球場入りしてトレーニングを開始したのは、この日に備えて前戦欠場で山ごもりに入っていた、“全国初老の星”エース・岩井だ。
アンチエイジングを掲げ、ストイックなまでに自らを追い込んだ挙げ句、栄養を失った枯れ木のように細く研ぎ澄まされた肉体を披露。
『まあ、これでまた岸投手と間違われるだろうけど、ね』
『左頬出せ』
『はい』
指揮官の闘魂注入で気合いを入れ直したエースが決戦の舞台へと足を踏み入れて行く。

球場前では1人の男が瞑想に耽ている。今、最も危険な時限爆弾を抱えた“NLデンジャーゾーン”中津。
NL100勝が懸かったメモリアルマッチで痛恨の決勝失策を犯し、不眠症に陥ったまま一週間、暗く冷たい部屋の片隅で体育座りを続けた男が
ここにいた。
『よく逃げ出さずに来た。いくぞスタメン!』
指揮官の一声で先発捕手としての出場が決定。記念試合の借りは大舞台で返せ…まだ若い将来性を買った首脳陣の無言の檄に、中津が再出発を
決意した。

もう1人、極度の大不振に苦しむ男がいた。NL創成期を支えてきたベテラン“ダーオ”小田だ。
アラフォー・ホースメンの一員でありながら、過酷な夏場も首脳陣の強制労働的起用。
炎天下の中、幾度も「このフェンスを越えれば楽になれる‥‥」そんな過酷な状況下でも無言でグッと耐え、ただ1人フルイニング出場を続けて
きた鉄人がここにもいた。
そんな中、不振にあえぐ小田には指揮官がこの日の為にスペシャルバットを用意。
『今日はやったるよ』短いコメントの中に、並々ならぬ決意を感じ取った。

選手、そして家族も続々と球場入りし、一塁側ベンチへと入場する。
いよいよ2012年パブリック・リーグ優勝決定戦が、定刻通り午前10時に開始される。
リーグ最少失点とリーグ1のデフェンスを誇るN.ライオンズ。リーグ最多得点とリーグ1の攻撃力のメイズスクラッピーと対照的なチーム同士の激突となった決戦。

先攻のNLは、早速ベンチ前で円陣を組む。声出し担当の神谷がチームを去って以来、実に4年振りの“出陣式”だ。
声出しは、新婚&優勝のWオメデタを祈願して指命された美澤が務め上げた。

先頭で打席に入るのはGO池田。これまで敢えて下位打線を担い続け、この大舞台で遂に斬り込み隊長として指揮官の抜擢を受けた逸材だ。
積極的に振りに行った打席は強い当たりのファーストゴロに終わるが、この一打が後続を目覚めさせた。
続く“NLトリプルスリー”久保も様子見など一切ないフルスイングで強烈なサードゴロ。しかし、久保の俊足に慌てた相手守備のエラーを誘い
1死二塁、普段通りの野球で早くも得点圏だ。
ここで3番“孤高の天才”松永が打席へ。いつものようにクールな出で立ちを装いながらも、誰よりもチーム打撃に徹するサムライの目が光る。
打球はベンチの大歓声と共にセンター頭上を遥かに越えるタイムリー二塁打。早くも待望の先制点だ。
いつもは淡々と大仕事をこなす松永が、二塁ベース上で珍しくガッツポーズだ。大舞台での殊勲打を受け、舞台裏では早くも祝勝会場の準備に取り掛かった。

その裏、満を持してマウンドへ上がった岩井が、柄にもなくド緊張だ。いつもの球威、制球は影を潜める。
リーグ戦で見せた鉄壁の守備陣まで連鎖的反応を見せ始め、ここにきてディフェンスの崩壊現象だ。
度重なる失策と四球が絡み、一気に2点を失い逆転を許すと、なお2死満塁の大ピンチ。盛り上がる相手ベンチとは対照的に、静けさに包まれてしまったNLベンチ。
祝勝会場ではNLの勝利を信じ、シャンパンの用意を始めた頃、何とか岩井がピンチを2点で食い止め、青ざめた表情でベンチに戻っていく。

『一年間ジジィでローテを回してきた。今日は絶対に代えない』
試合前から完投を決めこんだ指揮官は逆転を信じ戦況を見守る。

2回、下位打線ながらもここから反撃を開始する。
まずは先頭の岸本が、切れ味鋭い相手外国人投手の変化球になんとか食らいつき、ボテボテの内野ゴロ。
慌てた相手守備のエラーを誘い一塁へと生き残る。タダでは凡退しない“持ってる”何かを見せつけた。
続く中津は尋常ではない集中力でピッチャー返し。差し出したグラブを弾いた打球はショートの逆を突き、深い所への内野安打で繋いでいく。
無死一、二塁。思わぬ形で逆転の走者まで出すと、静けさが増していたNLベンチが押せ押せモードに突入する。
ここで1年間の借りを返してやる!と打席に入った小田の気合いだけが空回りし、まさかの初球キャッチャーフライ。
続くMG深町は決め球をことごとくカットし意地を見せるも、最後は剛球ストレートに敢えなく三振。
『俺が見せてやるよ』
気合いで打席に入った岩井は、やはり当たらない“く”の字フルスイングで観衆を湧かせた挙げ句、パフォーマンスの見せしめか、痛烈な死球を
浴びてしまう。
しかし、これで2死ながら満塁。イケイケドンドンになった祝勝会場ではシャンパンの栓が開けられ、いつでもの臨戦態勢へ。
打席にはGO池田。願ってもない同点、いや逆転いや、大量得点の大チャンス!
しかし、GO池田にしてもド緊張の場面、いつもの積極打法が見られず、最後はまさかの空振り三振。
嘘だろ~……栓が開いたシャンパンを池に放流すべきか悩む関係者に向け、今度は岩井がピッチングで魅せ始める。

リードされた事で失うものは何もない、いつもの投球術を取り戻した岩井は2回裏を無失点に切り抜ける。
だが、この2回までの攻防で予想以上の試合時間が経過してしまっていた。マズい……このままの展開では最悪の事態に陥ってしまう。
3回、そんなNLベンチの思惑が遂に形になって現れた。

先頭の久保が出塁だけを念頭に置いた四球を選び無死一塁。ここで打席には先ほど第1打席で先制のタイムリーを放った松永。
願ってもない場面で願ってもない打者を迎えると、その期待に応えるのが松永という男だ!
今度は職人的な流し打ちで完璧に捉えた打球はライトの頭上を越えるタイムリー三塁打。一走・久保が長駆ホームインし、同点に追いついた。
殊勲打を放った松永は塁上で再びガッツポーズ。ベンチは狂喜乱舞の大盛り上がりだ。

こうなると後はこの男が決めてくれるだろう。“永遠の4番打者”美澤~!が、ここはまさかの空振り三振に倒れる。
チャンス潰えたか…に見えたが、ここからさらにチャンスを拡大していく。
続く吉武、安井が『やっぱり打ちたい…しかも大きいの…そしてダイヤモンド一周…そしてヒーローに…』という黒い欲望を全て捨て去り、
チーム打撃に徹した挙げ句、確実に四球を選び一死満塁とした。
打席には岸本。ここでも何かやらかすか…プンプン匂う打席で相手投手の宝刀ムーヴィングボールに食らいついた打球はボテボテのサードゴロ。一塁へ送球するも間一髪間に合わず生還!遂に勝ち越しだ。
ここで打席には中津。まだまだやり残した事があるんだ~というスイングから放たれた打球は、痛烈なライナーとなりショート左を抜けるレフト前2点タイムリー。三走・吉武に続き、絶好のスタートを切っていた二走・安井も激走。カメラを意識したスライディングを魅せホームイン。
大きな大きなリードを3点と広げた。

岩井は改めて気合いを入れ直し、マウンドへ。
微妙なコントロールが外れ四球で走者を許すも、後続を抑え決して得点を許さない。
4回はMG深町が『逆方向へはこう打つんですよ』と言わんばかりのライト前安打で出塁。久保が『こうですね』と言わんばかりに痛烈なライト前安打で繋ぎ、なんだかんだで2死ながら満塁。
『先生、後はよろしくお願いします』とばかりに4番・美澤へと打席が回るも、まさかのキャッチャーフライ……リードを広げられず、いよいよゲームは終盤へ。
5回には先頭の吉武が『左の場合はこう打つんですよ』と鮮やかな流し打ちでレフト前安打を放ち、NL流し打ち祭りのトリを飾った。

最終回、走者を出しながらもここまで何とか2失点に抑えてきた岩井。
1死一塁。美澤がサードフライを処理し、飛び出しかけた一塁走者を刺すべくファーストへ送球。『アウト!』思わぬダブルプレーにNL守備陣がベンチへ帰りかけた途端、“NLきっての良識人”“100年に1人の神の子”一塁手・吉武が、『ノー。私はベースを踏んではいません。従って、今のアウトは成立しません』と申告。
NLの黒い戦士たちは『そんなの黙ってればわかんないって』と反論するも、白い戦士たちの『いや、そんな黒く汚いプレーで優勝を決めたくはない。正々堂々とやろう!』
場内は涙ながらに拍手喝采。こんな汚れた時代に、なんて清々しいフェアプレー精神。ありがとう、N.ライオンズ!!
というNL1黒い男の妄想の中、あと1人となってから、岩井がピッチャーフライをまさかの落球……。

2死一、二塁。一発出れば土壇場での同点劇。迎える打者はクリーンアップ。
ここで“神の子”を封印し一塁手・吉武が『いや、さっきの場面は一塁ベース踏んでました』と強硬に主張しようと一瞬、頭をよぎるも後の祭りだ。
大一番、土壇場での同点、逆転の場面に湧き上がる相手ベンチ。
まさかの展開に祝勝会場の撤収を見据えるNL関係者。
好対照な両チームとなったが、NLベンチの指揮官に動揺の色は見えない。

『今年1年引っ張ってくれたエースだ。初老と心中』メンタルな部分も含め、ダテに長く生きているわけではない。
岩井は1年の集大成、最後の搾りカスを力に変えた渾身のストレートで三振に斬って取りゲームセット!
これでプレーオフ制度施行後初、1リーグ時代に遡ると5年振り3度目の優勝を飾った。

試合後は何度も設営、撤収を繰り返した『駕与丁N.ライオンズスタジアム』側に用意された特設祝勝会場にはA5ランクの牛肉を筆頭に
高級魚介類、高級キノコ類がズラリと並んだ中、優勝祝賀BBQを開催。指揮官の号令と共に始まった300本用意されたシャンパンシャワーは
わずか5分で終了。その後、指揮官の体が胴上げにより3度宙に舞った。

また、この日の白星でNL創設より通算100勝目と、NL年間最多勝利を決め、リーグ制覇に華を添えた。

■平成24年10月21日/雁の巣⑥/
○レッドバイソン 3-2 N.ライオンズ●

RB:1 0 0 0 0 0 2: 3
NL:0 0 0 1 1 0 0: 2

勝・美澤 0勝1敗0S
●美澤ー中津

【経過】
パブリック・リーグ2012優勝決定戦を1週間後に控え、最終調整の練習試合を迎えた。
この日は試合の中盤から終盤にかけて、1人のプレーヤーが天国と地獄を体験する事となる。
試合は久々の先発マウンドに上がった、かつて“大魔神”として恐れられた美澤。
この男がマウンドに立つ時、それはNL勝利の瞬間を決定づける、絶対的エースの登板だ。
その立ち上がり、野手全員で美澤を後押ししよう!と思ったのも束の間、この日の不安定な守備陣に足を引っ張られ、早くも1点を失って
しまう。

しかし、2回以降は万全だ。変化球の制球が絶妙に決まり出し、相手打線をリズム良く斬っていく。
そんな美澤を援護したい打線は、初回から塁上を賑わし、そして消え去っていってしまった。
初回は無死満塁……前回のトラウマを払拭すべく打席に入った4番・美澤があえなくサードゴロ併殺。続く吉武もセカンドゴロに倒れ、
やはり、まさかの無得点。
2回も府後が放った特大の左中間二塁打で1死二塁。ここも後続の中津、岸本が倒れ無得点。

3回には先頭の久保が特大のセンターオーバー二塁打。しかし期待のGO池田、松永、吉武が倒れ無得点。
そろそろ何とかしてやれや~!の叫びが聞こえた4回、無死二塁のチャンスから中津が価千金のセンター前同点タイムリー。
5回には2死三塁から相手バッテリーエラーにより、NLお得意の“泥臭え~”勝ち越し点を奪い、いつもの逃げ切り態勢へと入る。
そして最終回。誰もが勝利を確信しつつあったが先頭打者をあっさり四球で歩かせる美澤。
まだ大丈夫だ。

相手打線も泥臭い粘りを見せ始め、土壇場で同点に追い付かれてしまう。
なお1死三塁。打球は打ち取ったサードゴロ。名手・松永が鮮やかに捌きバックホーム。勝ち越しを阻止……したはずが、捕手・中津がまさかのノータッチプレー……選手全員の動きが固まったまさかのボーンヘッドで勝ち越し点を奪われてしまう。
ここまで来れば負けられない。

最終回、先頭の美澤、吉武が『打ちたい、ヒーローになりたい』黒い欲望を抑え勝負に徹し四球を選び無死一、二塁。キタ、キタ、キタ~!!!
ここで勝負所に6番に据えた安井がファーストゴロで三走・美澤が塁間を3往復させられた挙げ句、憤死……。
続く期待の府後も凡退し2死。ここで打席にはまさかの“ビッグプレー”の汚名返上に燃える中津。
これ以上ないシチュエーションに、中津が気合いを込めた一撃は大飛球となりレフトへ。『まさか…逆転サヨナラか~…』の期待も虚しく、
最後に失速しフェンス手前でのレフトフライ。ゲームセット。
まさか、は起こり得る。
その教訓を生かし、翌週に控えた今季最大の大一番を迎える事となった。

■平成24年10月14日/駕与丁公園
○N.ライオンズ 1-0 ブルドッグス●

B :0 0 0 0 0 0 : 0
NL:0 0 0 0 1 X : 1

勝・岩井 10勝2敗2S
○岩井ー翔平

打・なし

【経過】
遂にこの時がやってきた……プレーオフ準決勝の大一番。
パブリック・リーグにプレーオフ制度が導入されて以降、NLの鬼門として立ち塞がる大きな壁である。
ある時は、勝利目前としながら大逆転を喰らった事もある。
またある時は、自信満々でガチンコ勝負を挑み惨敗を喫した事もある。
この日に備え、指揮官は戦略を練りに練ってきた。が、しかし、最後はチーム全員の精神力が勝敗を左右する。
試合前からピリピリムードかと思いきや、普段通り最年長の初老ギャグや安井の安いギャグがベンチ内で交錯する。
これなら大丈夫だ。

誰もがいつもの戦い方を確信したものの、試合は思わぬ展開へと進んでいく。
NLの先発マウンドに上がるのは、非難殺到自称イケメン最年長右腕・岩井。
今や誰もが信じて疑わない、絶対的安定感のエースが満を持しての登板だ。
その立ち上がり、『抑えて投げた』という言葉とは裏腹に、誰もが心配するぐらいの、たのきん全力投球。
指揮官がしっかりと固めた100万ドルの内野陣へ凡打の山を築き、しっかりと三振で初回を締め堂々のベンチ凱旋だ。

岩井のリズム良い投球に触発された好調NL打線はその裏、トップに入った女房役・翔平が見事にレフト前に弾き返し出塁。
指揮官の想いが詰まった2番・安井までも期待に応えてレフト前へ連打を放ち、幸先良くビッグイニングの匂いをプンプンと漂わせてきた。
続く久保はチーム1の優等生ぶりを発揮し四球を選び、無死満塁と絶好の先制点の場面を迎えた。
しかし、プレーオフの呪縛にかかった後続に、あと1本が出ない。リーグ戦で右に左に長短打を炸裂し続けた松永、吉武、岩井が3者連続で凡退し、まさかまさかの無得点。
2、3回も息を吹き返した相手投手の術中にハマり得点を挙げられず、いつもとは違う不穏な空気がベンチに漂う。
しかし、そこを打破し続けたのは、ダテに老衰を続けているだけではない、“進化した生きる化石”岩井の熱いピッチングだ。
2回、プレッシャーで固くなった守備陣の乱れで得点圏に走者を背負うも、『先に点はやれん!』とばかりに、唸りを上げる魂のストレートで
三振を奪いピンチを脱する。

3回には松永が守備で魅せた。相手先頭打者の痛烈な当たりに体を張って阻止!
『ホットコーナーは誰にも破らせないぜ』とばかりのファインプレーで鉄壁のディフェンスを見せつける。
すると4回、熱い岩井の投球と鉄壁の守備陣が打線に喝を入れた。

1死から先ほどチャンスに凡退した松永、吉武、岩井が相手投手をジワジワと追い詰めるかのように四球を“奪い”塁上を埋めていく。1死満塁……今度こそ……の期待を込めた後続の府後、岸本がまさかの凡退。
経験豊富なベテラン勢を持ってしても、プレッシャーの波にのまれてしまった…まさに恐るべし、プレーオフの壁!
これだけチャンスを逸すれば、相手に流れが傾いてしまうもの……。
5回、ここまで完璧な投球を続けてきた岩井のカミソリシュートが先頭打者の内角をエグり過ぎて死球を与えてしまう。
ここでチャンス拡大とばかりにスチールを仕掛けてきた一塁走者に対し、今度はNLが誇る鉄砲肩、いやバズーカ捕手・翔平が待ってましたと
ばかりの二塁送球。厳しい捕球体勢からでも難なく走者をセカンド手前で刺し、リーグ屈指の盗塁阻止率を見せつけた!
ここ一番での翔平のビッグプレーに、球場全体がスタンディング・オベーション!ベンチの首脳陣も立ち上がっての拍手喝采だ。

ゲームは中盤まで両チーム無得点。プレーオフ・セミファイナルに相応しく、緊迫した攻防が繰り広げられていく。
こうなると一発長打での決着がおぼろげに見えてくる。
自慢の長打力を持つNLの各打者の『あわよくば俺がヒーローに』との淡く黒い欲望が渦巻いていく。
しかし、この日に限っては誰ひとりそんな者はいない……はずだ、多分。
目指すところは繋いでの1点……遂に5回、その時がやって来た!

この回もあっさり2死。誰もが次の回が勝負と思ったところで恐怖の下位打線・GO池田のバットが火を吹いた。
鮮やかなライト前安打で出塁すると、次打者で捕手が弾いた僅かな隙を突き、俊足を活かして二塁を陥れる。
ここでこの日、1軍登録されたばかりの新戦力“ひとりCHEMISTRY”前野が執念で叩きつけてのサードゴロ。
必死の形相で一塁へ駆けると、焦った相手守備陣のエラーを誘い、二走・GO池田が一気に本塁へ!生還だ!!
活気づく一塁側・NLベンチ。

まさかの形でようやくの先制点を挙げ、ベンチ前で投球練習中の岩井の眼差しがキラリと光った。
『これで…トルネード…やっても…いい?』
その瞬間、ベンチで采配を奮っていたはずの指揮官が助走をつけ始め、ジャンピング・ニーの態勢へ。
気を引き締め直し最終回のマウンドへ向かう岩井。

最後まで球威が落ちない“奇跡のアラ50”投球術が冴え渡るが、ここで指揮官の絶妙な選手起用が最後に実を結ぶ。
吉武を温存し、府後を一塁手で起用したところに、堅守・松永のサードゴロ送球が珍しく高~く逸れる。
誰もが悪送球→無死二塁→嫌~な得点圏という最悪のシナリオを想定したものの、府後がチームNo.1の長身から3メートルに届くかと
いうリーチ幅を余す事なく生かし切っての好捕!
まさに“ビッグ”プレーで相手の反撃の芽を完全に摘み取り、岩井が最後をキッチリと締めくくった。
1点を争う大一番での完封劇で遂にプレーオフ準決勝の壁を突破。
『次?次なんて考えてやってない。今からまた徹夜して作戦を練るだけ』
首脳陣の“黒い計算”が正解を生み、選手の“心がひとつ”になり、総てを“出しきった”時、NLの5年ぶり3度目の栄冠が見えてくるはずだ。

■平成24年9月30日/雁の巣⑨/
○N.ライオンズ 6-0 ナイトクルーズ●

NL :0 0 2 0 2 1 1: 6
NC :0 0 0 0 0 0 : 0

勝・岩井 9勝2敗2S
○岩井・久保-翔平

打・翔平 2

【経過】
大型台風も何のその、NLの今季雨天中止ゼロという快記録をまたも更新した、この日の練習試合。
強風の吹き荒れる雁の巣で、『この風を利用しない手はない』とばかりに“黒い”プレーが次々と炸裂する。
先発は当然のように“初老”岩井。この日は風を味方につけカーブ、スライダーを有効活用。
女房役・翔平が『えげつない角度』と称賛する変化球が唸りをあげ、相手打線を手玉に取っていく。

先制したい打線は3回、先頭の岩井が『このオッサン、2回転するんじゃねえか』と周囲の度肝を抜く、恒例の“く”の字フルスイングで空振りを魅せるが、最後は巧妙に四球を選び出塁。
続く久保が死球を受け連続出塁を果たすと、遂にNL打線にスイッチが入った。
この日、指揮官から調整と奮起を期待され2番に入った安井が痛烈なレフト前安打で覚醒し、無死満塁。
3番・翔平がキッチリと弾き返すセンター前タイムリーで先制すると、この日初の4番に座った自称Sの松永が『これでもか~!』とばかりに
超特大のレフトオーバータイムリー二塁打。『本塁打か!?』
とざわめく喧騒をよそに、フェンスのない雁の巣ならではの曖昧エンタイトルとなるも、NL唯一の木製バットで真芯を捉えた職人芸がこの日も
炸裂し、リードを奪った。

こうなると“図に乗る”岩井の投球術が面白いように炸裂。
5回には先頭の安井が“遅すぎたお目覚め”、サードを風と打球で強襲する内野安打を放ちこの日マルチを決めると、“NLの暴れん坊将軍”翔平が
負けじとセンター前安打で続く相乗効果。
1死から“黒い計算ならお任せ”吉武の打球が痛烈に、かつ嫌らしくファースト横を襲い、打球が転々とする間に2点タイムリーとなりリードを
4点と広げた。

こうなると年甲斐もなくはしゃぎまくり、図に乗った岩井のピッチングが冴えまくる。
5回も簡単に2死を奪い、続く打者もあっさり追い込んでのラストボール。『ひょっとして、オッサンやるんじゃねえのか?……』
『あ〜〜っ!やったあ〜〜!』誰もが危惧した通り、ついに岩井の“なんちゃってトルネード”が久々に解禁。
しかし、これを出せば力みが入り結局四球を与える悪循環。何とかこの回を無失点で終え、『やれやれ、いや~わりぃわりぃ……』
とベンチに戻る岩井。

そこへ外野守備から猛然と助走ダッシュをかまして来た指揮官のジャンピング・ニーが岩井を直撃!吹っ飛ぶ最年長に、『このボケ!調子に乗るなコラあああああ!!!』。過去最大級のカミナリを落とし、締めるところをキッチリと締め上げた。

6回、その先頭・岸本が興奮冷めやらぬ中、センター前安打で出塁し、バッテリーエラーの間にいつのまにか三塁まで陥れた。
指揮官の膝蹴りを喰らい、ひとときの謙虚さを取り戻した岩井がキッチリとライトへ犠牲フライを放ち追加点。
最終7回には1死三塁から吉武が前進守備の一塁へ狙いすましたボテボテの当たり。キッチリと三走・松永の足と状況判断の良さを視野に入れ、最後まで黒い打点を稼ぎ切る荒業。

結局、先発・岩井は風を味方につけるキレキレで5回無失点の11奪三振。最後は久保が三者凡退で締める完封リレー。
各個人とチームの調整期間を終え、いよいよリーグ戦プレーオフへと突入する。

■平成24年9月23日/駕与丁公園/
○アブラマンズ 6-1 N.ライオンズ●

NL :0 0 0 0 0 1 0: 1
A :0 0 3 3 0 0 X: 6

敗・岩井 8勝2敗2S
●岩井ー中津

【経過】
現在8連勝中。勝つ事だけが全てではない、として、ここで厳しい鞭を入れておく必要がある。
首脳陣が選んだ今回の対戦相手は、“泣く子も黙る”『アブラマンズ』。あの、草色のユニホームを見ただけで対戦相手が震え上がったという
草野球界きっての強豪だ。

初回、相手先発は“NLを知り尽くした男”好調なNL打線を3人で片付けて貫禄を見せつける。
早くもゲームは一方的なワンサイドか……そんな不穏な空気が球場を支配する。
しかし、そんな相手に怯むことなく、虎視眈々と勝利を狙う怖いもの知らずの、いや、頼もしい男がNLの先発マウンドに向かった。
絶対的な老人エース・岩井だ。
試合前に『今日は去年とは違うからまかせて』と顔面から迫ってくる初老に指揮官はイラッ。
初老の左頬に“闘魂注入”試合開始。

昨年の対戦では自らの大乱調でゲームを壊した苦い経験をもとに、この日は立ち上がりから球威、制球ともに抜群のピッチング。
強打の相手打線に対して緩急自在の投球術で的を絞らせない。特に、相手主砲・美澤が打席に立つと、目の敵のように大人げない真剣モードだ。
そんなこんなで2回まで両チーム無得点。一応、スコアの上では緊迫した投手戦となった。
先に均衡を破るのはどちらか……3回、NLにビッグチャンスが訪れる。
松山、中津がクサい当たりの内野ゴロを連発して相手エラーを誘い、無死一、三塁。誰もが先制を確信した場面も、走塁死と後続が倒れ、まさかの無得点に終わってしまう。

その裏、今度は相手打線の巧みな技と、NL守備陣の信じられないミスが連発し3失点。
重い、重~い3点を何とかすべく4回、先頭の岸本が懸命に四球を選び出塁するも、クリーンアップが次々と凡退し無得点。
その裏にも味方に足を引っ張られ続け、決定的な3点を失った岩井。それでも老いた眼差しの鋭さは消えていない。
視線の先には相手主砲の姿が。vs美澤に異常な執念を燃やす岩井。最年長にも関わらずヤジられ続けた怨みか、『あいつさえいなければ俺が
エースで四番だったのに……』という理不尽な思い込みか。
そんな岩井は第1打席でチーム初となるライト前安打を放つと、最終第2打席には指揮官の『コメカミで打て!』という捨て身の指令に応えて得意の“く”の字フルスイングからボテボテのサードゴロ。
『まあ1勝1敗だな』初老の自己満足をよそに、そんなこと知ったこっちゃねえとばかりに試合は終盤へ。

今度は主砲・美澤との対戦に執念を燃やす岩井は、予定投球回を終えながらも指揮官に懇願し続投。結局、完投してしまい、久保の登板機会を奪ってしまう。
打線は6回に相手2番手投手の制球難でようやく1点を返したものの、最後はまたもやマウンドに舞い戻った美澤に抑え込まれ試合終了。
完敗こそ喫したものの、10月に予定されるプレーオフに向けて、最高の調整を終えた。

■平成24年9月9日/駕与丁公園/
○N.ライオンズ 5-3 シャークス●

S :2 0 0 1 0 0 0: 3
NL :3 1 0 0 0 1 X: 5

勝・久保 5勝0敗0S
S・岩井 8勝1敗2S
○久保・美澤・岩井-府後・松永

打・吉武 3


【経過】
順調にリーグ戦全日程を終えたNLは、プレーオフまでの調整期間に様々な戦いに打って出た。
マウンドに上がった久保は2試合連続の先発。ここまで無傷の4連勝中。“NLの番人”が安定感を生かして相手チームの前に立ちはだかる。

初回の立ち上がりを捕えられると、2点を失ったが決定打を最後まで許さず打撃陣にいい流れを作る。
その裏、前回のゲームで1番を務め先頭打者初球ホームランを含む大暴れを見せた松永が指揮官の期待に応え再び先頭の打席へ。
今度はその2球目、火の出るようなレフト前安打で口火を切ると、好調のNL打線が早くも呼応する。
続く小田が冷静に四球を選び無死一、二塁とすると、この日も三番に入った久保がドンピシャのフルスイング。
打球は左中間を破るエンタイトル二塁打で1点を返すと、3試合振りに帰ってきた我らのセンセイ、四番・美澤が力まないはずがない。
打球は詰まった三塁ゴロになるも、焦った三塁手の悪送球が重なり一気に2人の走者が生還。
NLお得意“どさくさ紛れの一気呵成攻撃”でこの回3点を奪い逆転に成功した。

リードすると今度は久保のペースだ。持ち前の緩急を巧みに生かし、絶妙な制球力で相手打線に得点を許さない。
そんな久保をバックが盛り立てる。府後が久々の捕手先発出場でベテランらしく匠のリードを展開し、“スパイダーネット”と称される長い手足を存分に生かして際どい投球も再三止めていく。
今度は同じくベテラン・小田が、レフト守備で魅せまくる。穴が開いたスパイクシューズに足を取られ老朽化して裂けたグラブの隙間から覗いたほとんど素手の状態で、痛烈な打球をダイレクトキャッチ!
用具を無駄にせず、完全に使い潰すまで履き続ける熱き“昭和オイルショック世代の男”のビッグプレーで、流れを引き渡さない。

2回には追加点だ。
今度は“Mr.80年代”が意地の追加点。2死満塁のチャンスに、『引っ張ってあわよくば柵越えしたい…流してオイシイとこ持っていきたい…』という黒い欲望を捨て去った吉武が際どい投球を見極めての押し出し四球でリードを2点に広げた。
久保は4回に被弾し1点差に迫られるも、勝ち投手の権利を得たまま降板。何とかリードを広げたい打線はその裏、三~五番クリーンアップを迎える願ってもない大チャ~ンス。
しかし三番・久保がサードゴロ、四番・美澤がセンターフライ、五番・吉武がファーストゴロ……あからさまな一発狙いも不発に終わり、あっさり無得点。

5回からは“帰ってきた大魔人”美澤がマウンドへ。
全く危な気ない投球で相手打線を封じ込め貫禄のホールドポイントで2イニング無失点。2回以降大味な攻めで得点を挙げられないNL打線は
6回、再びクリーンアップの打順へ。
同じ過ちは繰り返せないと先頭の久保が四球出塁。得点圏まで進みチャンス拡大。
しかし美澤がまさかの“大型扇風機”で空振り三振……またも狙いまくったのか……再び悪夢がよぎるが、続く吉武が芸術的な流し打ちでショートの頭上を越えるセンター前タイムリー。
ようやく待望の追加点が入ると、残るはラストバッター・岩井の名物“く”の字フルスイングだ。直球、変化球全てに同じフルスイングで心意気を見せると、あり得ない方向への大ファウルでボールを紛失させ、指揮官の怒声が響き渡る。
最後も期待通りの空振り三振でひとりスッキリすると、『さ~て最終回いっちゃおっかな~』。肩をグルグル回し始め、2試合連続のセーブを
目指し指揮官の前を通り過ぎるも、全く無視される。『あれ?見えなかったのかな~』しつこい40代を前に遂に指揮官がブチ切れ。
『うっせー!アホ』……指揮官の”予定通りの登板指令”が下りると、岩井は最終回をキッチリと無失点に抑え、ゲームを締め括った。

■平成24年8月26日/駕与丁公園/
○N.ライオンズ 5-2 春日フェローズ●

KF:1 0 0 0 1 0 0: 2
NL:3 0 1 0 0 1 X: 5

勝・久保 4勝0敗0S
S・岩井 8勝1敗1S
○久保・安井・岩井ー中津

打・府後 2
本・松永1号(1回=ソロ)

【経過】
リーグ戦全日程を消化し、約1ヶ月半の調整期間へと突入したNL。
これからはプレーオフへ向けての短期キャンプ、そして実戦を通じて最終段階を迎える。
リーグ戦上位が確定した段階で主砲・美澤の8月休養が決定。指揮官は『あらゆる起用法を試す』と、久しく実戦から離れていた安達を合流させて練習試合をマッチメイクした。
この日の相手は今季2度目の対戦を迎える強豪。前回は完敗を喫した相手だけに、ここは各選手の調整以上に結果も求めていきたいところだ。

先発は久保。ここまでエース“初老”岩井に次いでローテーションを守り抜き、無傷の3連勝中。
どの球種でも確実にストライクが取れる絶妙の制球力と球威で、この日も強打の相手打線に立ち向かって行く。
そんな久保をリードする女房役は古巣時代からの同僚・中津。気心知れた間柄で久保の持ち味を引き出していく。

初回に先制を許したものの、その裏すぐさま反撃に転じる。
指揮官のズバリ采配はこの日も健在だ。初のトップに座った松永が、相手投手の初球を躊躇なくフルスイング!左中間の一番深い所を襲った
痛烈な打球はそのままグングン飛距離を伸ばしフェンスオーバー。待望のNL第1号ホームランとなった。
試合開始前に年下選手に『今日は練習試合なんで、思いっきりスイングでホームラン打つんじゃないすかぁ~』
NL一のクールな男はイジりとも思える発言をもろともせず、正に有言実行の一発となる。
松永オリジナルの木製バットに左中間最深部……誰もが度肝を抜かれた一発であっさり同点に追いつくと、この一撃をきっかけにNL打線が爆発する。

続いて2番に抜擢された中津も左中間を破る二塁打で出塁すると、この日はクリーンアップに入った久保の打球までもが左中間へ。
レフトの頭上を遥かに越えるタイムリー二塁打となると、返球ミスの間に俊足を飛ばして三塁を陥れる。

さらにここ最近絶好調の府後が、指揮官のクリーンアップ起用に応え得意の右打ちでライト線上にポトリ。ライト前タイムリーとなりこの回
長短打を絡めて一挙3点。先発の久保に大きな援護点だ。

指揮官と同級生ながらその強靭な肉体を信頼され毎試合フルイニング外野守備出場を果たす“鉄人”小田。決してチーム内のいじめでも、100安打記念のイラストで描かれたタッチに不満がある訳でも、ない。
また、オフを利用して独立リーグでの武者修行と『ライオンズ・ベースボール・アカデミー』での研究に余念がないベテラン・吉武が下位で攻守に大活躍。
2回に相手投手の初球カーブを得意の流し打ちで痛烈にレフト前に運ぶと、3回には今季初のレフト守備で魅せた。無死一、二塁の場面で打球は左中間を痛烈に襲うライナー性の打球。抜ければ同点という大ピンチにまさかのランニングキャッチで大ファインプレー!『ついでに一回転しようかと思ったけど、ベンチからの視線が痛かった……』と黒い計算を封印しての美技で久保を助ける。
結局この回を無失点に切り抜けるとその裏、安井が四番の貫禄を見せての押し出し四球で貴重な追加点。
さらに安井は四番の重責に押し潰される事なく、6回にもレフト前タイムリー。

先発の久保は結局4回1失点のナイスピッチングでリリーフに後を託した。
セットアッパーは“守護神”安井だ。いつもの安定した投球内容でピンチにも動じる事なく2回1失点。
安井がゲームを締める前に降板するのはまさに異例。さあ、誰がラスト1イニングを締めるんだ……『俺だ!!』と言わんばかりに、年功序列のゴリ押しか、安井の冷たい視線を浴びながら“初老”岩井がマウンドへ。
気分よく1イニングを無失点に切り抜け勝利のハイタッチを決めると、意気揚々とベンチへと戻る。
岩井は今日こそ指揮官の称賛を浴びるかと思いきや、『リリーフがなんで振りかぶって投げとんねん!』と一喝。
『いや、振りかぶりたい衝動にかられて……』と蚊の泣くような声で言い訳した後、気をきかせたつもりで用具入れに放り込んだロジンはむき出しのまま。『ミットが粉まみれやんけボケ!』とダメ押しの一喝。
指揮官の愛情表現の塊を受けた最年長が、NL5年ぶり3度目のリーグ制覇を決めて、指揮官への恩返しを果たす。

■平成24年8月19日/名島運動公園/
○N.ライオンズ 5-2 早良区LOVE●

NL:0 0 1 3 1 0: 5
SL:1 0 0 1 0 0: 2

勝・岩井 8勝1敗0S
○岩井ー中津

打・岸本 1

【経過】
リーグ戦ブロック1位通過を賭けて真夏の天王山、首位攻防戦が遂に実現。
3週間のオフを利用し、各主力選手がそれぞれのモチベーションを高めるための調整に専念した。
万全のチーム状態かと思いきやNL不動の四番、主砲・美澤が一身上のラブな都合により無念の欠場。

大黒柱を欠き、チームの動揺が心配されたものの、そこは策士“主将”岸本。
これまで通り、“黒い参謀”と知恵を絞り作戦を練り続ける。強肩の正捕手・翔平をセンターで、キャッチングに定評の中津を捕手で、
オールラウンドの安井を遊撃、不動の遊撃手・久保をセカンドで起用。この絶妙なセンターラインが勝負の流れを左右した。

さらにベテランを活かさずに勝利への道は無しとばかりに、ここは奥の手を解禁。
実家の倉庫から発掘してきたアラフォー垂涎の“お宝本”で、ベテラン勢のモチベーションを高めたところで試合はスタート。

先発を務めるのはもちろんこの初老。球暦40年を越えた“生きた化石”、今や自他ともに認めるNLのエース・岩井だ。
しかし、大一番を前に年甲斐もなく緊張したのか、遂に体力の下降線で現役引退を意識し始めたのか、いつもの球威が影を潜める。
相手打線にあっさり先制を許すと、なお得点圏に走者を背負い、ライト線へ痛打を浴びてしまう。
『しまった~……』
しかし、ここでチームを救ったのは、指揮官の絶妙な起用でライトの守備に就いていた府後。
チーム№1のリーチを誇る府後が際どい打球に長い左腕を目一杯伸ばしてのナイスキャッチ!ファインプレーが絶体絶命の窮地を救った。

大一番を迎えて動きが堅いチームに一撃を加えたのは、試合前に指揮官の“ニンジン作戦”でモチベーションを高めたベテラン・吉武。
こちらも球暦30年を越える芸術的な流し打ちを豪快にレフト線に決めてチーム初安打。
お目覚めの号砲をきっかけとして、反撃に転じたのは3回だ。

先頭の岸本が三遊間を破るレフト前安打で出塁。旗揚げから采配に徹し続けてきたばかりか、毎年数本の野手真っ正面の当たりで安打を損し続けてきた男が、遂にNL通算100安打を達成!
記録にはこだわらない主将だが、この一撃でさらに活気づくNLベンチ。

1死から打席には岩井。『俺が祝砲を決めてやる!』とばかりに、体が“く”の字に折れ曲がるほどの豪快なフルスイングを見せたものの、
緩い変化球に全くタイミングが合わない空振り。ベンチの爆笑を誘いつつも、最後はしっかり四球を選びチャンス拡大。
トップに還ると頼れる核弾頭がいる。1死一、二塁から久保がキッチリとレフト前へ転がすと、三塁コーチャーが二走・岸本を制止に入る。
が、この日いるはずがないベンチからの“神の声”『回れ~!』が響き渡る。まさかの指示にベテランも最後のひと踏ん張りを見せ本塁へ激走!
タイミングは完全にアウトか…やってもうたか~…いや、しかし、滑り込む岸本と交錯した捕手のミットからボールがポロリ…。
岸本執念の激走が生んだ、起死回生の同点劇だ。
“神の声”の主は、『全ての状況を総合的に判断した結果。これがライオンズ伝統の走塁』と、あくまでも結果オーライ説を否定。

追いついた事で岩井のピッチングが蘇る、こともない。しかし、要所での制球が定まりエースらしく試合を組み立てていく。
4回、俊足の翔平がセーフティバントで先頭出塁。続く四番・安井、吉武が冷静に四球を選び、クリーンアップで無死満塁と絶好の勝ち越し
チャンスを演出。
ここで指揮官が6番に抜擢した府後のバットコントロールが炸裂。センターへと高々と打ち上げた犠牲フライ。三走・翔平が生還し勝ち越しに
成功。押せ押せの中、2死となったが尚も満塁のチャンスで打席には主将・岸本。
ここでベテランならではの配球読み切りで、打球は痛烈に三遊間をライナーで破るレフト前安打。今度は老骨にムチ打つ二走・吉武の激走で
二者が還る2点タイムリーとなった。

3点差とはいえ強打の相手打線がこのまま黙っている訳がない。案の定、すぐさま1点を返され2点差、なお走者三塁。相手打者の当たりは
セカンド後方、ライト前にフラフラと上がった打球。この日セカンドに入っていた久保が俊足を生かして執念で追い掛ける。
だが、あまりにも深い打球に追い付けるのか。誰もが失点を覚悟した中、久保が高度なE難度のスライディング背面キャッチでこの打球を好捕!
大ファインプレーでこの回を最小失点で乗り切ると、5回には代わった相手投手を攻め立て、安井の押し出し四球で貴重な追加点。

決して本調子ではなかった岩井だが酷暑の中、気合いで最後までリリーフを仰ぐことなく、エースらしいピッチングで完投。
投打がガッチリ噛み合ったNLがブロック1位をほぼ手中に収め、リーグ戦全日程を終了。
指揮官の采配と、選手の力が結集し、次はいよいよプレーオフの大一番へと突入していく。

■平成24年7月29日/香椎浜第2/
○N.ライオンズ 17-0 レギウス●

NL:4 12 0 0 1:17
Rs:0 0 0 0 0 :0

勝・久保 3勝0敗0S
○久保・美澤・岩井ーGo池田

打・なし

【経過】
リーグ最終戦“天王山”を翌月に控えたNLナイン。この日は真夏の香椎浜にて、“暑すぎる”熱闘を展開した。
調整のため欠場の安井に代わり、この日は準構成枠から“和製大砲”谷川を3番センターで、準構成枠からこの日1軍登録した“最強の秘密兵器”
GO池田を1番キャッチャーで先発起用した。
主力を休養させても、破壊力が落ちないNL打線の層の厚さを物語る攻撃が、初回から繰り広げられた。
先頭GO池田の四球を皮切りに、松永の進塁打、美澤の打球が相手エラーを誘い早くも先制すると、走者を置いて府後が右中間突破2点タイムリー二塁打。

2回には圧巻の打者16人攻撃だ。
1死から岸本が選んだ四球から繋がりを見せると、満塁から谷川がパワー一閃レフトオーバーの走者一掃タイムリー三塁打、美澤がセカンド強襲
タイムリー、さらに直ぐ様満塁とすると、府後がライト前へ2打席連続タイムリー、吉武がライトオーバー2点タイムリー二塁打、MG深町が
ライト前2点タイムリーなどで12点を挙げた。
5回には四番・美澤がキッチリとセンターへ犠牲フライを放ち計17点。
先発の久保は暑さを計算し守備時間を短縮させる“エコ投球”。2イニング無失点で無傷の3勝目を飾った。

二番手で“大魔人”美澤があっさり1イニングを抑えると、来月の決戦を見据え“初老”岩井を投入。
『待ってました』とばかりにいつもの全力投球を見せると、あまりの絶好調ぶりに年甲斐もなくハメを外し、最後の打者のウイニングショットで“トルネード投法”を解禁。
ひとり悦に浸るも案の定、指揮官からの“呼び出し”をくらい説教を受け、何事もなかったかのように球場を後にした……。

■平成24年7月22日/駕与丁公園/
○N.ライオンズ 5-1 アローズ●

NL:2 0 3 0 0 0 0: 5
AR:1 0 0 0 0 0 0: 1
勝・岩井 7勝1敗0S
○岩井ー中津

打・吉武2

【経過】
リーグ戦も残り2試合となり、いよいよプレーオフ進出を懸けた真夏の天王山を迎えた。
そんな大事なゲームは過去、毎年NLの絶対的エースが先発を務めてきた。
そして今季、指揮官が指名した“エース”は、やはりこのオッサン。“初老”岩井だ。
今季のこれまでの先発とは違い、天王山という過酷なシチュエーションに岩井も緊張感も持ちつつ気合い十分だ。
しかも相手チームとは過去、好勝負を展開しながらも1度しか勝てていない。

そんな岩井を援護したい打線は初回、正式入団2試合目ながら首脳陣の信頼を得て2番に定着した松永がセンター前安打で出塁。
続く安井の内野安打を経て2死一、二塁。ここで打席には吉武。試合前に打順降格を告げられるが、試合直前に『どうだ?やれるか?
やれるのか?お前の力でやってみろ!』指揮官の言葉にうなずいての5番起用。その初球、指揮官の5番起用に見事応えた打球はレフトの
頭上を遥かに越える2点タイムリー二塁打。やはり大一番の勝負所はベテランの一打だ。
指揮官の『絶対に先制』という至上命令を突破し、先発の岩井に早速2点の援護点だ。

初回のマウンドに向かう岩井はいつにも増して気合い十分。『昨日、高校野球を観戦して原点に……』チームメイトへのアピールを忘れない
岩井に対して、やはり指揮官の『うっせ~!早くマウンド行け!』という怒声が響き渡る。

立ち上がり、先頭打者にいきなり死球を浴びせ出鼻を挫かれると、続く打球は打ち取ったライトフライ……しかし、名手のベテラン・小田が
まさかの落球。無死一、二塁……これが大一番だ、と言わんばかりの不穏な空気が漂ってきた。
しかし、ここで窮地の岩井を救ったのは鉄壁のセンターラインだった。1死から相手四番打者の鋭い打球はセンター右を破る長打コース。
1点を返されてなお一塁走者が三塁を蹴ってホームへ。センター松永が的確に打球処理しショート久保へ。強肩の久保が深い位置からレーザービームでバックホームし捕手・中津が体を張った好ブロック!
見事に同点の走者を本塁で刺し、傾きかけた流れを呼び戻した。

すると、蘇った老体がマウンド上で躍動する。2回を3者連続三振で斬って取り意気揚々とベンチへ。『だから昨日、高校野球を……』
『うっせ~!調子に乗るな』。指揮官の“続投指令”は続く。

そうなると何としてでも欲しい追加点。あとは頼れる四番に全て回そう、任せよう!
3回、トップの久保から松永、安井、みんな四番の一打に懸けて繋ぎ、2死満塁。ここで打たなきゃ男じゃない。美澤が豪快に放った当たりは、左中間への大飛球。
しかし、俊足のセンターが大飛球に追い付きかける……まさかの大ファインプレーか!?『あぁぁ………』ベンチの誰もが落胆しかけた次の瞬間、ボールはセンターのグラブより僅か先に落ち、走者一掃の3点タイムリー二塁打!『さすが四番!』のひと振りでリードを一気に4点とした。

うだるような暑さにも、老体はビクともしない。岩井の球威は最後まで落ちる事なく、捕手・中津のミットに吸い込まれていく。
課題の制球力も克服し、終わってみれば7回被安打2、14奪三振の完投勝利。
岩井の好投はプレーオフ進出を決定させた大きな1勝となった。

『だ・か・ら・昨日の高校野球………』『うっせ~!帰れ!』『いや、BBQだけは参加させて(T_T)!』
NLの熱く、激しい夏が始まった。

■平成24年7月8日/駕与丁公園

○N.ライオンズ 4-1 Peeps●
P :1 0 0 0 0 0 0 :1
NL:1 0 1 0 2 0 x :4
勝・岩井 6勝1敗0S
○岩井ー翔平

打・翔平1
本・翔平1号(ソロ)

【経過】
NLに頼もしい新戦力がやって来た!
内外野全てのポジションを守れ、打線の中核を担う男として首脳陣が交渉を進めていた松永選手がこの日より正式入団。
真新しい背番号『4』のユニホームに袖を通し、早速スタメン2番サードでのNLデビューを果たした。

先発は、何だかんだ首脳陣に注文を付けられながらも、エースとしての風格を漂わせてきた“初老”岩井。
立ち上がり、早速先頭打者に四球を与え、死球も挟みつつあっさり先制点を与えてしまう。
NL初の東京六大学出身としての威厳も誇りも砕け散り、寂しげな足取りでベンチへ戻る岩井に、指揮官の冷たい視線が突き刺さる。
またも首脳陣に何だかんだ注文を付けられる最年長初老岩井。

そんな岩井を援護してあげたい打線は初回、先制を許した直後に反撃開始。
入団初打席が初安打となった松永が1死から逆らわずおっつけての右中間二塁打で出塁。その後相手エラーの間に同点のホームを踏み、
早くもチームへの貢献を果たし首脳陣を喜ばせる。

同点に追いついてもらった岩井は本来の投球パターンを思い出し、その後無失点に抑えていく。
すると今度は3回、そんな年上の岩井を叱咤激励してきた女房役・翔平が値千金の第1号ソロホームランをレフトスタンドへ叩き込み勝ち越しに成功。
直後の4回、1死からライト線に弾き返される三塁打を浴び、一打同点の大ピンチを招く。
しかしここを捕手・翔平の巧みなリードと勢いのある投球で連続三振に切り抜けると、意気揚々とベンチへ戻る愉快なおじさん岩井。
終盤には『もう奪三振11個目だろ?』と淡く黒い欲望を口にするも、指揮官に一喝され再度、意気消沈……。何だかんだ注文を付けられる。

5回に再び翔平のレフト前タイムリーと安井の内野ゴロの間に貴重な追加点を奪い、岩井は再三苦しいカウントにするもここはベテランゆえか
年齢を感じさせない投球で1失点自責0の完投勝利。
大ベテランとそれを監視する首脳陣の他に、新戦力をも加え弾みをつけたNLの今後に注目だ。

■平成24年6月17日/香椎浜第1/
○N.ライオンズ 16-3 マスタング●

MG: 0 0 3 0 0 0 :3
NL : 2 2 7 1 4 X :16
勝・久保 2勝0敗0S
◯久保・翔平・安井ー翔平・中津
打・なし

【経過】試合開催のこの日だけ雨が降らないという、梅雨時の奇跡を演出して臨んだ一戦。
リーグ戦の生き残りを懸け、もはや一敗も許されない厳しい戦いが続いているが選手に悲壮感は感じられない。
初老のエースはリフレッシュ休養、ベテラン勢は揃ってベンチでアラフォー談義……。

そんな中で先発のマウンドを任されたのは、首脳陣から全幅の信頼を得ている久保だ。
そんな久保を援護したい打線は初回無死三塁から、この日の女房役・翔平がセンター前にクリーンヒットを放って1点を先制。
さらにこの回相手エラーも絡みもう1点を追加した。
久保は初回を難なく無失点で切り抜けると、先制の援護点を受けた直後の2回、1死満塁の大ピンチを背負ってしまう。
しかし久保は冷静な投球術で2者連続三振に斬って取り、相手打線に1点も与えない。
いいリズムで攻撃に繋ぎ、2回には再び2死満塁からまたも翔平の押し出し死球と相手エラーでさらに2点を追加した。

勢いに乗せると恐い相手打線に3回、一気呵成の3点を奪われ1点差とされてしまう。
このまま沈黙してしまえば相手チームへと流れが移ってしまう。ここで何とかしたい打線は、何とかしてしまい過ぎるほどの大猛攻に転じた。
1死二、三塁から吉武がベテランらしくレフト線ギリギリへ流し打つ技ありのタイムリー、続く府後も勢いに乗ってレフト前タイムリー、
さらに満塁と攻め立て岸本のピッチャー強襲の内野安打がタイムリー、トップに還り久保がレフト前タイムリー、翔平が2打席連続となる
押し出し死球……気がつけばこの回10者連続出塁を含む打者13人を送り込み7点を奪って一気に突き離した。
4回も追加点、5回には久保の2打席連続レフト前タイムリー、仕上げは1死満塁から松山が“大トリ”となる「伝統芸」押し出し死球を浴び、
大差がついたゲームでも観衆の心をガッチリと掴んで離さない。

こうなると先を見据えての継投策だ。
疲れの見え始めた久保を4回で降ろすと、5回は翔平がNL初登板。
得意の豪速球で相手打線をねじ伏せ無失点デビューを飾ると、最終回前に背番号6がベンチ前で腕をブンブン回して猛アピール。
13点差がありながらも“守護神”安井が志願の登板。
今シーズンイマイチ波に乗り切れてなかった右腕が密かにフォームを変更。リリースポイントを変えて挑んだマウンドでは快速球を連発!
うやむやのうちに試合時間切れで見事に試合を締め括った。

■平成24年6月10日/駕与丁公園/
○N.ライオンズ 6-0 ダービッツ●

D :0 0 0 0 0 0 0: 0
NL:1 0 3 0 1 1 X: 6
勝・岩井 5勝1敗0S
○岩井・美澤-中津

打・吉武 1

【経過】
約1ヶ月ぶりのリーグ戦再開。
先発マウンドを託されたのは、今や自らをNLの絶対的エースと公言して憚らない“初老”岩井。
この日も立ち上がりから、四捨五入して生誕半世紀を迎えるとは思えないダイナミックな投球フォームを見せ、初回を三者凡退。
リーグ最年少の相手先発投手との年齢差は実に30歳近く……。
負けられないオッサンはいつにも増して球威、制球力抜群で無失点イニングを重ねていく。
調子に乗りまくってきたベテランは時折“自称トルネード投法”を織り混ぜるなどやりたい放題。
ここでノリノリの40代へ向け、指揮官の『余計な事するなー!』と自制を促す激しい檄が飛ぶ。

打線は初回、相手投手の立ち上がりを攻め立て、1死満塁から吉武が押し出し四球を選び先制点。
3回にも中津が地味に押し出し死球を浴び追加点を叩き出すと、さらに小田のベテランくさいセンター前2点タイムリーで一気に突き離す。
終盤にも相手エラーなどで2点を追加して、いよいよ岩井の完封へ向けてのお膳立ては整った!

しかし、ここでオレ流指揮官はおもむろに審判に近づき、あっさり『ピッチャー交代』を宣言。
その姿を茫然と見つめる悲しき最年長・岩井は被安打2無失点の好投お役御免でベンチの片隅にひっそりと消え去った。
勝負に徹した最終回はNLの大魔人こと美澤がピシャリと締めての完封リレーで勝利。
いつものように、最年長の老体を気遣いながら、先を見据えた選手起用を見せた1勝であった。

■平成24年5月20日/榎田中央公園/
○春日フェローズ 9-1 N.ライオンズ●

KF:2 2 0 0 2 0 3 : 9
NL:0 0 1 0 0 0 0 : 1

敗・松山 1勝1敗0S
●松山・美澤・安井-久保

【経過】
リーグ戦の空き日程を利用し、指揮官は初対戦となる強豪チームとの練習試合をマッチメーク。
今後の厳しい戦いに備え、個々の鍛練にも全く抜かりがない。
エース“初老”岩井を欠き、『遂に足腰、立たなくなったか』『遂に心、折れたか』『遂に息、途絶えたか』……様々な憶測が交差する中、
この日は左腕・松山が先発。

しかし、強打の相手打線に初回2点、2回にも2点を失い、早くも重苦しいムードがベンチを包み込む。
『こんな時にあの、冴えないオヤジギャグがあれば……』岩井の欠場が大きく響く展開も、3回にようやく突破口を開きかける。
この回先頭の岸本がベテランらしいドン詰まりのサードゴロを放ち、一塁へ大激走!間一髪内野安打を勝ち取ると、続くMG深町がまたまた
魅せた!
不甲斐ない上位打線に『よく見ておけよ!』とばかりに放った打球は、芸術的な放物線を描きながらもライト線ギリギリにポトリと落とす
二塁打。この日チーム初にして唯一の長打で無死二、三塁とチャンス拡大。
一気呵成に攻め立てたい打線は続く府後が、これまたベテランの味を見せつけドン詰まりのセカンドゴロ。
三走・岸本がゴロGOのスタートで好走塁を見せ、下位打線で1点を返した。

反撃ムードを持続させたいNLは、先発・松山を3回で諦めて、4回から“大魔神”美澤を今季初登板させ、禁断の扉を開く。
美澤はベンチの期待に応え、あっさり三者凡退に切り抜ける。すると、その裏の打線がチャンスを作りNLが誇る強打の左打者に期待を懸けるも、松山があとひと伸び足りないライトフライ、吉武もあとひと伸び足りずセンターフライに倒れ無得点。

ディフェンス面でも流れを変えたい。
サード松永が難しい当たりを再三さばき、ライト岸本が痛烈なライト前のゴロを掴み一塁へのレーザービームで刺してライトゴロに仕留めると、相手に傾く流れを呼び戻していった。

5回には5点差に開いたものの、まだまだ諦めない打線はその裏、MG深町が今度も必死に食らいついてのセカンドゴロ。チームプレーに命を懸ける大激走で相手エラーを誘い、またもや出塁を果たした。しかし、一塁を駆け抜けたところで右太もも肉離れ全治4週間の大怪我に見舞われる
アクシデント発生。
交代要員がおらず、満身創痍で出場を続けるMG深町の姿に発奮した府後が鮮やかに一二塁間を破るライト前安打でチャンス拡大。
トップに還り久保がキッチリ見極めて四球を選び、1死満塁。猛反撃の狼煙を上げ、ここで迎えるは、何度も修羅場をくぐり抜けてきた
ベテラン・小田。しかし、狙いすました初球攻撃も虚しくピッチャーゴロとなり、まさかの併殺。
結局、最終回にも3点を追加され、終わってみれば1―9と大差をつけられての完敗。

試合後の首脳陣に落ち込んでいる様子はない。
なぜならここ2試合、招待選手として助っ人出場していた松永学選手と試合後の入団交渉で合意に達し、晴れて入団が決定。
捕手を含めた内外野全てのポジションを任せられるユーティリティプレイヤーのNL入団。反攻の夏に向け、頼もしい新戦力がやって来た!

■平成24年5月13日/上月隈第2
○N.ライオンズ 17-2 丸喜レンジャース●

NL :4 2 10 1 0 0 : 17
MR:0 0 1  0 0 1 : 2

勝・岩井 4勝1敗0S
○岩井・安井-久保

打・府後 1

【経過】
“激アツ!!パブリック・リーグ”の名に相応しく熱く、激しい戦いが繰り広げられる中、いよいよチームは中盤戦に突入。
目まぐるしい順位変動の最中、ひとつも落とす事ができない戦いが続いていく。

そんな大事なゲームの先発を任されたのは、“無限のスタミナオヤジ”こと岩井。
毎試合、年下の首脳陣に激しくイジられながらも、チームのエース格にのし上がった強さで、この日も好投を演じていく。
そんなオッサンを援護すべく、一回りも二回りも若い打撃陣が初回から爆発していった。

トップの久保が、もはや当然のようにレフト前安打で先頭出塁を果たすと盗塁を難なく決めてお膳立て。
続く“超攻撃型二番”松山がセンター前に運んで繋ぎ、安井の高々と上がった飛距離十分のレフト犠牲フライで先制。
続く美澤のあわや『いったか~』的センターへの大飛球が犠牲フライとなり、重量打線らしい2者連続の犠飛で2点。
さらに吉武、小田が出塁し繋がると、府後、岸本の連続タイムリーでこの回一挙4点を奪った。

2回にも美澤の左中間突破2点タイムリーで追加点を奪うと、圧巻は3回だ。
岸本の内野ゴロの間に1点を奪うと、続くMG深町がこの日チーム一番の当たりで右中間を破るタイムリー。
火が点いた打線はとどまる事を知らず、さらに久保がレフト前タイムリー、松山がセンターオーバーとなる2点タイムリー二塁打、
美澤がレフトオーバーのタイムリー二塁打、吉武がレフト前タイムリー。気がつけばこの回だけで打者16人を送り込み10得点。

チーム最年長の先発・岩井の老体を労うかのような、心優しきNL打線の大量援護だ。
気を良くマウンドに上がった岩井だったが、大量援護の油断からか1点を失うも、ゲームを壊さないピッチングを披露。
結局、岩井は4回1失点でまとめると、後をリリーフ陣に託しマウンドを降りる。余力など残している暇はない。目一杯の大往生だ。

そんな最年長の勝ち星を確かなものにする為、大量16点リードながらも“守護神”安井がマウンドへ上がり、ゲームを締め括った。
活況の打線、ベテラン健在、そして新戦力の登場……今後の戦いに向けて弾みをつける1勝となった。

■平成24年4月29日/舞鶴公園/
○N.ライオンズ 4-2 六本松ブラックソックス●

NL:4 0 0 0 0 0 0: 4
BS:0 0 0 0 0 2 0: 2

勝・松山 1勝0敗0S
S・安井 0勝0敗3S
○松山・岩井・安井-翔平

打・松山 2

【経過】
今季初の練習試合。
初対戦となる相手チームとの試合は予想を遥かに上回る好勝負となった。
初回、先頭の久保がいきなりレフトオーバーとなる二塁打でチャンスを作ると、翔平がキッチリと四球を選び無死一、二塁。
ここで安井が相手内野手のエラーを誘い、先制点を叩き出すと、四番・美澤も技ありのライト前タイムリーで2点目。
吉武がベテランの技で進塁打を放ち1死二、三塁とすると、続く松山が見事な打球で右中間を破る2点タイムリー。
繋がりの打線でこの回一挙4点を奪い、幸先良いロケットスタートを見せた。

先発は“帰ってきた左腕エース”松山。かつて一枚看板としてNLを支えた男が、この日も素晴らしいピッチングを披露。
3イニングを無失点に抑えると、後を受けた“老衰知らずの最年長”岩井も持ち味を存分に発揮し、2イニングを無失点。
共にローテーションの柱として君臨する2人が、互いに譲らず好投を見せる。
こうなると、初回の猛爆撃の続きを期待したいところであったが、その後が続かない。

4回2死一、二塁、5回無死一塁、6回2死満塁……度重なるチャンスの場面をことごとく潰し、2試合連続の初回得点のみ。
しかし今のNLは先制逃げ切りパターンを確立しており、鉄壁の守備で相手打線の勢いを凌いでいく。
そうなると、必勝リレーの締め括りとして“守護神”安井がマウンドへ上がり終盤、ディフェンス勝負の時がやってきた。

走者を背負い、相手打者が放った打球はセンター頭上を越えるタイムリーか…
しかし、ここで俊足の松山がフェンスに当たりながらのスーパーキャッチ!
相手の勢いを止めると最終回は危なげなく無失点。安井は相手の攻撃を凌ぎ切り、見事3セーブ目を挙げた。

初対戦にして見事にスイングした好勝負を展開した両チーム。今後の対戦も非常に楽しみなところだ。

■平成24年4月22日/水産加工センター/
○N.ライオンズ 3-1 Peeps●

NL:3 0 0 0 0 0 0: 3
P :0 1 0 0 0 0 0: 1

勝・岩井 3勝1敗0S
S・安井 0勝0敗2S
○岩井・安井ー中津

打・安井 1

【経過】
春の訪れと共に、NL重量打線が目覚めてきたものの、この日はそんな打線が仇となってしまう。
初回、先頭の久保が痛烈に三塁線を襲い俊足を生かして内野安打にすると、すかさず盗塁。
1人で得点圏へ進塁すると、続く小田も四球を選んで連続出塁。一気に塁上を賑わしていく。

すると安井がまさかの逆方向……誰もいないライト線に運ぶ技ありモテモテタイムリー二塁打で二者を迎え入れた。
2点を先制するとここで迎えるは前の試合で逆転満塁弾の四番・美澤。誰が何も言わなくても、狙っているのはレフトスタンドである事は明白。
狙いを定めて『いったかぁ~!?』という大きな当たりは、スタンドには僅かに届かないレフトへの大飛球。
しかしキッチリ三塁走者を還す犠牲フライとなって、リードを3点に広げた。

続くは2試合連続アーチ中の吉武。指揮官が『わかってるな』と釘を刺すも、そのスイングを見る限り、やはり気持ちはスタンドへ向いている。
ここも慎重に狙いを定めて打ち上げた当たりはセンターへの大飛球。『3試合連発か~!?』の淡い期待も虚しくセンターフライに終わる。
この“一発病”に取り憑かれた2人に触発され、NL打線の歯車も微妙に狂い出してしまう。

2回には1死二、三塁で久保の第2打席。『いったかぁ~!?』の大飛球もフェンス手前で失速するレフトフライ。
しかし犠牲フライには十分な飛距離だ。が、しかし!三走・府後がまさかのスリップダウンでタッチアップに失敗。
昨夜の雨は完全に乾いていたものの、『ぬかるんでたからね』とアクシデントを強調するボーンヘッドで、貴重な追加点をフイにしてしまう。

3回は安井。今度は明らかに狙ってますよ的なモテスイングから打球は最後に失速しレフトモテフライ。
『こら~お前ら!狙ってないで、チームバッティングに徹しろ!』
指揮官の檄が飛んだ直後の6回、そんな岸本の当たりまでレフトへの大飛球。フェンス際まで下がっている相手守備陣の術中にハマってしまう。
7回には岩井だ。そのフルスイングに嘘はつけないとばかりに、これまたレフトへの大飛球。
しかし、あとひと伸びが足りずレフトフライに終わる。

結局、NL打線は飛距離を飛ばすだけ飛ばした挙げ句、初回の3点だけというまさかの“まずい”展開。
こうなると投手陣に頑張ってもらうしかない。
先発の“初老”岩井は大ベテランらしく味のある投球術、まだまだ衰え知らずの剛球ストレートで、6イニングを投げ1失点。

最終回は“守護神”安井が満を持しての登板。先頭打者をあっさりストレートの四球で出塁させるモテない投球。後は『苦しい時の捕手頼み』
とばかりに、キャッチャー・中津をコキ使って抑えに入る。
次打者を際どいキャッチャーフライで仕留めると、続く打席で飛び出した一塁走者を中津が誘い出しタッチアウト。
労せず一気に2死として、最後の打者を内野フライに打ち取るモテ球内容で、貫禄の省エネ2セーブ目を上げた。

残るは誰もが忘れ去りそうになっていた、府後のNL100安打達成。残り1本……から年を越し、まさかのこの時期までズレ込んで来ていた。
日に日にのし掛かる重圧……しかしこの日の第2打席、火の出るようなレフト前安打が飛び出して、遂に、大記録達成!
史上5人目、生え抜きの苦労人がようやく結果を残し、燦然と輝くその歴史に名を刻んだ。

■平成24年4月15日/上月隈第1/
○N.ライオンズ 9-4 福岡LINX●

NL:0 0 6 2 1 : 9
LX:2 2 0 0 0 : 4
勝・久保 1勝0敗0S
◯久保ー杉山

打・美澤 2
本・美澤1号(満塁=3回)
  吉武2号(ソロ=3回)

【経過】
誰からも愛されたナイスガイで、絶対無敵のエース・SUNの感動的な退団劇から1ヵ月……チームは燃え尽き症候群と化して気力を失い、
試合日程さえも組むことができず。

ようやく再開したリーグ戦ながら、今度は選手層がギリギリの貧困状態。
こんな時こそ頼りにしたい大ベテランの力、“初老”岩井までまさかの欠場とあって、先発マウンドには久々に久保が上がった。
チームの危機を救うべく、責任感の強い久保は気負ってしまったのか、立ち上がり、いきなり先頭打者に一発を浴びて出鼻をくじかれると、
アンビリーバボーな失策も絡み初回2失点。
2回にもリズムを作れず四球絡みで2点を失い4点のリードを許すと、試合序盤で早くも勝負あったかと思われたものの、
ここから“手負いの獅子”が一気の逆襲に転じる。

3回、1死一塁からラストバッター杉山が、相手左腕からお手本のようなライト前安打を放つとベンチの空気が一変。
2死となるも松山が四球を選び満塁とすると、いよいよクリーンアップへと繋がる。
三番・安井が“打ちたい…決めたい…ヒーローになりたい…そしてモテたい”黒い欲望をグッと我慢してチームプレーに徹し押し出し四球を選んだ。1点を返し3点差、なお満塁は続いていく。
ここで迎える打者は、泣く子も黙るNL不動の四番・美澤。誰もが期待するのは一発。しかし、誰も口にしないし、してはいけない。
力んでのポップフライ……悪夢が脳裏をよぎるも、身を固め男を上げたこの日の美澤は何かが違う。
鋭いスイングから放たれた滞空時間の長い打球は、NLベンチの夢を乗せてレフトスタンドへ突き刺さる期待通りのグランドスラム!!!!
起死回生の第1号逆転満塁ホームラン!!!!四番のひと振りで劣勢ムードを一気に吹き払い、ベンチはお祭り騒ぎだ。

興奮冷めやらぬNL打線は、続く吉武も執拗に粘った挙げ句、左対左をものともせずにフルスイングした打球は痛烈にライトスタンドへ一直線。
2者連続で自身2試合連続となる第2号ホームラン。奇しくも'07年7月29日柏原公園以来となるチーム2度目のアベックアーチ。
今回も再び美澤、吉武の四、五番弾だ。

4点ビハインドからこの回一挙6得点で逆転に成功し、得点差以上の厚い援護を受けた先発の久保はここから本領を発揮する。
伸びのある直球に斬れ味鋭い変化球が冴え渡り、以降無失点で完投。
4回には2つの押し出し四球で2点、5回にも相手バッテリーのエラーで1点を追加してダメを押した。

ゲームの行方が決まると、後は大記録への期待。NL通算100安打に王手をかけたまま年を越した、府後の打席に期待が集まるもノーヒットに
終わり、『もうプレッシャーかけないで!』と言い残し球場を後にした。
1ヵ月ぶりのゲームを勝利で飾った指揮官は、『エースが抜けて全員に繋ぐ意識が出た結果。もうひとつも落とせない中でよく逆転してくれた』
と語り、佳境を迎えるリーグ戦に確かなる手応えを掴んだ。

■平成24年3月11日/大井中央公園/
<9時開始>
○早良区LOVE 5-4 N.ライオンズ●
SL:0 0 2 0 3 0 0: 5
NL:1 3 0 0 0 0 0: 4
敗・SUN1勝1敗0S
●SUNー翔平

舞鶴公園/
<13時開始>
○N.ライオンズ 6-2 メイズスクラッピー●
NL:2 0 3 0 1 0 0: 6
MS:0 0 0 0 0 2 0: 2
勝・岩井 2勝1敗0S
○岩井・SUNー中津

打・美澤 1
本・吉武1号(2ラン)

【経過】
4年前、石垣島から「俺、黒人になる」
イカダを漕いで米国亡命を目指し福岡に流れついた青年が、今やNL投打の柱として大活躍。
その男……SUNが遂にNLを去る時がやって来た。

ダブルヘッダー第1試合は、当然のようにエース・SUNがマウンドに上がる。
強打の相手打線に立ち向かうその姿は、4年前、衝撃のデビューを飾ったあの時のままだ。
初回、先頭の久保が四球を選び出塁。二盗を難なく成功させて、翔平のサード内野安打でチャンス拡大。
NLが誇るスピードスターでお膳立てを果たすと、頼れる四番・美澤がドン詰まりながらもライト前へ運ぶ先制タイムリー。
クリーンアップを形成しSUNを育て上げた男が早速、援護する。

2回には小田がレフトオーバー二塁打でチャンスを広げると、お約束のようにMG深町が進塁打、そして岩井が右中間を破るタイムリー二塁打。
ベテラン勢の仕事キッチリぶりで追加点を叩き出すと、さらに高熱で医者からのドクターストップを振り切って病院を抜け出し強行出場を
果たした岸本がフラフラになりながらも四球を選び切りチャンス拡大。主将の生き様を感じ取った久保が続けざまにレフト前タイムリー。
翔平のサードゴロは俊足を生かしての三塁タイムリーエラー。この回一挙3点を奪い、試合を優位に進めていく。
だが強打の相手打線に3回、すぐさま2点を返され、5回には3点を奪われ逆転を許してしまう。

それでも再三のピンチをバックの堅い守備で守り切り、追加点は許さない。
相手二番手投手に沈黙していた打線だが、SUNを見殺しにするわけねえだろとばかりに最終回、2死無走者から奇跡のドラマを生み出しに行く。
MG深町が当たり損ないのサードゴロを放つも、死に物狂いで全力疾走。相手エラーを誘い出塁すると、続いて打席に入った岩井が全身でオーラを放ちながら火の出るようなセンター前安打。2死二、三塁…一打同点、そしてサヨナラの好機を演出し、打席には主将・岸本。NL初にして唯一のサヨナラ打を放った実績を持つ、文字通り“お祭り男”の登場に、場内が沸く。
しかし…すでに満身創痍の身体は悲鳴を上げていた。
ベテランならではの読みも集中力も、息途絶えた打席では敢えなく三振を喫しゲームセット……。

しかし、ここで終わりではない。勝ってSUNを送り出したい。NLナインの思いは続く第2試合、舞鶴公園に移動して行われた。
この地は4年前、SUNが衝撃のデビューを飾った球場。そして、ラストもこの地。NLフロントの粋な計らいに、ナインの誰もが気合い十分で
臨んだ。

相手先発投手は、NL対外試合初となる外国人投手。快速ストレートに鋭い変化球を交えてNL打線に立ちはだかる。
初回、そんな相手投手の出鼻をくじき、早くも先制点を奪った。
久保、小田の一、二番コンビが連続四球を選びチャンスを作ると、三番・安井が痛烈に弾き返した打球は左中間を深々と破るタイムリー。
さらにSUNがレフト前タイムリーを放ちこの回2点を奪った。
先発マウンドに上がったのは、ラストゲームを迎えたSUNとは親子ほど歳の離れた“初老”岩井。まるで親父が息子を思いやるかのように、
鬼気迫る表情で気迫の投球を見せていく。
『リリーフじゃね~んだぞ~』
『そんなに飛ばして最後まで持つのか~』

周囲の温かい檄を受けつつも力投を続け、相手打線に付け入る隙を与えない。
すると3回、四番・美澤がレフトに高々と打ち上げる犠牲フライで追加点。
さらにSUNの芸術的ライト前安打を挟んで、迎える打者・吉武が痛烈に放った打球は滞空時間の長い、放物線を描きながらライトスタンドに
突き刺さる2ラン。
『完璧。打った瞬間。SUNの打席のネクストで待っている時から、これが最後だと思ったらグッときた』という1号2ランでこの回3点を追加。
“ライオンズの聖地”平和台球場跡地に程近い、この舞鶴公園で運命的な一打を放って決定的なリードを広げた。
5回にも相手エラーで得点し6点差とすると、いよいよ岩井の初老初完封の期待が高まっていく。
しかしここで、『最後はSUNで締める』という指揮官からの“オレ流降板指令”を受け、ショックを隠せない岩井は次の回まさかの2失点……
潔くSUNにマウンドを譲った。

SUNは最後の打席をサードゴロで終えると、最終回、最後のマウンドに上がった。最後の最後まで持ち味のストレートで勝負し、1回を無失点。
有終の美を飾ると、試合後、ナインからの胴上げを受け、NL現役生活に終止符を打った。
しかし、誰からも愛されたナイスガイを、決して忘れる事はないだろう。

永久欠番の背番号33と共に……。

■平成24年2月26日/駕与丁公園/
○N.ライオンズ 6-1 ダービッツ●

NL:1 3 0 0 0 2 : 6
D :0 0 0 0 0 1 : 1

勝・岩井 1勝1敗0S
○岩井・久保ー中津

打・松山 1

【経過】
開幕2連戦で幕を開けたNL2012年。
そしてこの日の先発はチーム最年長“初老”岩井。エースSUNが昨年フル回転した肩の療養の為、渡米。代役とは言わせない、
何しろNL2012年開幕投手の金看板を背負った岩井が威風堂々とマウンドに上った。

初回、松山のライトオーバーとなるタイムリー三塁打で1点を先制してもらい、先発の岩井はいつも通り『今日は大丈夫!』
と周囲を安心させつつの立ち上がり。ここを無難に切り抜けると、あれよあれよという間に5回を無失点。
試合前の「今日は制球重視。無四球が目標」と公言通りのストライク先行の安定した内容のピッチング。やる時はやる男だ。

その間に打線も援護だ。
2回1死満塁ではまたしても松山が再三ファウルで粘った挙げ句、最後の最後にはお約束の押し出し死球!
NL必笑パターンにハマった打線はさらに、四番・美澤がセンター前2点タイムリー。
4点のリードをプレゼントし、全く危なげない投球内容の先発・岩井に今季初完封勝利の期待がかかる。
年上の岩井を最大限にバックアップしたい主将・岸本は6回、右を狙いながらのレフト線タイムリーで1点を追加。
ベテランらしい矛盾打法でリードを広げると、最後は四番・美澤がトドメとなるライト前タイムリー。
そして最終回、岩井の完封目前…しかし指揮官が主審に投手交代を告げる。
『ピッチャー、久保』
これぞNL指揮官の“オレ流采配”か!?
ベテラン限界説、石橋を叩いて渡る説、指揮官の嫌がらせ説……様々な憶測を生みながらも、最後は久保が1失点で抑えリーグ2勝目を飾った。

■平成24年2月12日/駕与丁公園/
<10時開始>
○アローズ 5-1 N.ライオンズ●
AR:1 0 2 0 1 0 1: 5
NL:1 0 0 0 0 0 0: 1

敗・岩井0勝1敗0S
●岩井ー翔平

<12時開始>
○N.ライオンズ 6-4 ブルドッグス●
B :0 1 0 0 0 3 0: 4
NL:0 0 4 0 2 0 X: 6

勝・SUN 1勝0敗0S
S・安井0勝0敗1S
◯SUN・安井ー翔平
打・久保 1

【経過】
No Limit!2012~出しきれ!N.ライオンズ~Hit!Foot!Get!……を旗頭に、NL9シーズン目の開幕を迎えた。
今年は史上初の開幕2連戦を敢行。まさに、出しきるための戦いが始まった。

注目すべき開幕戦のマウンドに上がったのは当然の事ながら、絶対的エース・SUN……ではなく、まさかのサプライズ岩井。
昨年途中入団を果たし、ローテーション入りを果たす活躍を見せたとはいえ、これは策士・指揮官の奇襲作戦か、
または単なる初老に対する陰湿なイジメか……。
様々な憶測が流れる中、“アラ還”がマウンドに上がると、大ベテランの経験から来る落ち着きぶりで先頭打者を三振に仕留める。
『いけるぞ~』誰もが思ったその矢先に、大豹変。四死球で走者を溜めて自らの牽制悪送球で失点してしまう。
なんとか1回を投げ終え、最年長らしからぬ低姿勢でベンチに戻ると、ひとり寂しく瞑想にふける。

そんな最年長をバックアップすべくその裏、1死から何でもないショートゴロを翔平が全力疾走で駆け抜け内野安打を勝ち取る。
2死二塁から打席は四番、Newバットを手に打席に向かう美澤。『統一球対策』と豪語しながらも、理論に逆行する超軽量型。
まさに“鬼に金棒”……一体どこまで飛ばすんだ~という周囲の期待を背負って打ち上げた当たりはスタンドまで全く届かないポップフライ……
いや、しかし、広~く空いた内外野の間にポトリと落ちるラッキーな同点タイムリーになってくれた。
『このバットは何か持っている』……以降、快音を求めて使い続けるも、相手ベテラン投手の術中にハマり0行進。

状態がいいのか悪いのかわからない先発の岩井は、完投しながらも小刻みに失点。
結局、4点差をつけられ開幕戦黒星を喫するも、『開幕日に勝てばいい』という開き直りから2試合目に突入。


開幕投手を岩井に譲ったとはいえ、キッチリと“開幕日投手”を務めるのは、やはりエース・SUN。
立ち上がりを無難に切り抜けるとその裏、“NLの核弾頭”が火を吹く。
久保が放った大飛球はライト頭上を襲い、俊足を飛ばして二塁いや、二塁を蹴って三塁へ。ここでまさかの“神の声”『ホームへ行け!』。
慌てて久保が本塁を陥れるも、間一髪タッチアウト。
一気に盛り下がるNLベンチ。指揮官が『誰がGO言っとんじゃ~!!』。
ここ最近NLベンチに潜むまさかの“疫病神の声”で先制のチャンスを逃すと、2回に失点し、重苦しい空気に。

開幕連敗は許されない3回、打線はこの日唯一となる繋がりを見せていく。
先頭の主将・岸本がレフト前安打で口火を切り二塁まで進むと、続く小田が相手内野陣のエラーを誘いすかさず同点に追いつく。
ベテランの泥臭い連係でゲームを振り出しに戻し、さらにMG深町がキッチリとおっつけて走者を進塁させ、岩井の連打でチャンス拡大。
ここで先ほど好走塁が大暴走に変わる不運に見舞われた久保が汚名返上の勝ち越しセンター前タイムリー。
一気に逆転して、なお満塁から松山の押し出し四球、さらに安井の一打が相手エラーを誘い、リードを広げていく。

先発のSUNは危なげない投球で5回1失点、指揮官に『これぞエースのピッチング』と絶賛され、余力を残したまま降板。
最後は勝利の方程式、“守護神”安井が登板。計算高く3失点しながらもリードを保ち、NL今季初勝利をもたらした。